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■田植え巡り コメか魚か(朝日新聞2003年5月28日第2滋賀版朝刊)

コメの品質向上を目指す県の遅植え指導に、漁師たちが困惑している。田植えが長期に及ぶことで、農業排水が河川や琵琶湖に流入する期間も長くなり、濁水でアユ漁に深厚な影響が出かねないからだ。県漁連は29日に総会を開き、県の農業排水対策の徹底を求める方針だが、県側は来年度以降も遅植えを農家に呼びかける構えで、解決には時間がかかりそう。

品質向上へ県、遅植え指導 農業

河川や琵琶湖の濁水は、田植えの準備段階の代かきで発生する。これまで、県内では4月下旬ごろから代かきを始め、5月の大型連休中に田植えを終える農家が多かった。しかし、ここ数年、「高温障害」による県産米の品質低下が続いていることから、県は今年、本格的に遅植え指導に乗り出した。

県農産流通課によると、県産米の1等米比率は90年代半ばまで90%台を維持していたが、昨年は48.7%まで落ち込んだ。出穂期が7月下旬から8月上旬にかけての高温期とぶつかるのが原因とされる。そこで、県は田植えを従来より1週間程度遅らせ、高温期の出穂を避ける指導に本腰を入れ始めた。その結果 、県全体の田植え時期は、昨年は大型連休が終わった5月7日までに75.9%の農家が済ませていたのが、今年は48.4%にとどまった。

品質向上へ県、遅植え指導 農業

アユはきれいな水を好み、濁りを生む土壌粒子などの懸濁物質が1リットルあたり25ミリグラムを越えると、その河川に寄りつかなくなる「忌避行動」を取るとされる。水がきれいになると戻ってくるが、県水産試験場の太田豊三主任専門員は「底にドロが残っていてもアユは嫌う。濁水が長期に及ぶと、アユのエサとなる藻類の成長が遅れるためアユ自体の成長も阻害される」と指摘する。

今年の濁水状況については県が調査中だが、遅植え指導で濁水が長期化しているのは確か。びわ町の南浜漁協の鳥塚五十三組合長は「昨年は大型連休以降は川の濁りが収まり、アユが戻ってきた。だが、今年は5月下旬になっても濁る日があり、昨年は1日1トンほどの漁獲が今年は100キロに満たない日もある」と嘆く。

県魚鱗の杉本敏隆会長は「コメの品質向上は理解できるが、今年は、昨年の渇水の影響でアユの産卵量 自体が少ない。このままでは全体の漁獲減少につながりかえない」と心配する。

しかし、県農産流通 課は、来年度以降も遅植え指導を引き続き実施し、最終的には5月20日前後の田植えを呼びかける方針だ。濁水対策としては、モデル地区を定めた無代かき農法の実施や各農協を通 じた啓発に力を入れるとしている。