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■淡海のひと 琵琶湖博物館主任学芸員 中井克樹さん 外来魚の危険性訴え(2001/6/3 朝日新聞朝刊滋賀県版)

なかい・かつき 39歳、大阪府豊中市出身。96年4月から琵琶湖博物館の悪芸技師、97年4月から現職。幼少時は昆虫と貝の収集に没頭した。京都大大学院時代にアフリカ・タンガニーカ湖で魚類の子育てを潜水調査し、学位 論文にまとめた。琵琶湖では90年から毎年、ブラックバスの繁殖期に潜っている。

ブラックバスの産卵がまっさかりです。外来魚が琵琶湖でなぜ増えたのですか

「積極的な放流があったのではないですか。今でも放流したいという釣り人や子どもが見つかるくらいです。過去にも外来種が放流され、カムルチーなど食害が懸念されるものもありましたが、在来種に決定的な影響を与えることはほとんどなかったようです。その後、ブラックバス、ブルーギルが続きますが、放流する側や研究者、行政も生態系への打撃を予測できませんでした」

外来種が乱す生物の多様性とは

「『生き物のにぎわい』と言いましょうか。それぞれの場所にもともといた生き物がいる当たり前さです。アフリカのライオンが日本の野山にいたら不自然のように、生き物には本来の分布域があります。長い共存の歴史で互いに行き過ぎることのない組み合わせの生き物が、進化の中で選ばれてきたのです。」

多様性が損なわれるとどうなるのですか

「種や地域独自の個体群は技術で復元できないので、絶滅すると取り返せません。多用な生き物からなる生態系の歯車がどんどん欠け、ある段階を超えると破局が訪れるでしょう。その前に地域の恵みに根ざした持続的な生き方を模索するべきです。」

琵琶湖の漁獲量 の減少は外来魚だけが原因ですか

「沿岸域でブラックバスとブルーギルの個体数は5指に入るほど多く、実際に小動物を食べているデータがあります。相当な影響を与えていることは想像でなく、論理的な推測です。もちろん、絶滅が心配されるまでに在来種の数を減らした原因に環境破壊もあります。環境破壊を無罪放免するつもりはないですが、ブラックバスの存在を正当化する理由もありません」

釣った魚を放す「キャッチアンドリリース」は命を大切にすることでは

「放された1〜2割は釣られたことが原因で死にます。手元で殺さないので勘違いされがちですが、痛めつけることには変わりありません」

「命を むやみに奪わぬ ため、『すべての生き物の命は同等に大切だ』という立場は尊重すべきです。しかし、人間は生きていくためにほかの生き物を殺生与奪します。外来種と在来種の決定的な違いは、在来種の命が不自然な過程で奪われることが、種の絶滅につながるこどです。外来種は人間の不始末に責任を取るために駆除の対象になります。駆除の痛みを心に刻み、かわいそうな外来種を生み出さない教訓とすべきです」